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先に、いちばん多い疑問に答えます。
『復讐が足りない』は完結していません。最終回はまだ存在しません。
それでも「完結」「最終回」で検索されているのには、理由があると考えられます。1巻の終わりで、この物語は一度きれいに終わったように見えるからです。主人公は目的を果たし、日常に戻ります。そこで読むのをやめれば、たしかに完結したように読めます。
ただし本当の話は、そこからです。復讐を果たした側が、加害者になっていく話だからです。
この記事では、朱里が北広に何をしたのか、井戸の場面から最新話までを順に解説します。あわせて配信サイトによって話数がまるで違う問題と、Renta!のレビューが★5しかない理由も書きます。
作品情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | 復讐が足りない |
| 作者 | 冬野梅子 |
| 出版社・掲載 | 講談社/コミックDAYS |
| 巻数 | 4巻まで配信中(4巻は2026年9月9日配信)・連載中 |
| ジャンル | 青年漫画/クライムサスペンス/人間ドラマ/オフィス |
| 主人公 | 復田朱里/小さなIT企業に勤める会社員 |
| Renta!評価 | 5.0(8件) |
| ドラマ化 | なし |
作者の冬野梅子さんは、『まじめな会社員』が「このマンガがすごい!2023」オンナ編3位、『スルーロマンス』が同2025年のオンナ編7位という書き手です。本作はその最新作にあたります。
先に断っておくと、この作品はスカッとしません。当ブログで扱ってきた復讐漫画とは、目的地が違います。理由は後半で書きます。
あらすじ(ネタバレなし)
復田朱里は、小さなIT企業で働く会社員です。
心の奥に暴力性を抱えていますが、それを隠したまま社会に適応し、善良に生きています。理不尽なことがあっても、社会人らしく受け流す。誰の身にもある、あの感覚です。
ある日、同僚の女性・真中が退職した理由を知らされます。社内での「性被害」でした。加害者は同じ部署の先輩、北広。既婚で、子どももいます。
朱里は上司に訴えます。ところが会社が守ったのは、被害者ではなく加害者のほうでした。むしろ異動させられそうになるのは、訴えた朱里です。
くすぶっていた炎に、火が入ります。
登場人物
| 人物 | 立場 | 役どころ |
|---|---|---|
| 復田朱里 | 主人公 | IT企業の会社員。暴力性を隠して「普通」に生きている |
| 北広 | 同じ部署の先輩 | 性加害者。既婚・子あり。会社に守られる側 |
| 真中 | 元同僚 | 被害を受けて退職。物語の起点になる |
| 社長・部長 | 会社の上層部 | 加害者を守り、訴えた側を動かそうとする |
この作品の見どころ
主人公が「特別な人」ではない
復讐漫画の主人公は、たいてい何かを奪われた人です。この作品は違います。朱里は当事者ですらありません。被害を受けたのは同僚で、朱里は話を聞いただけです。
だから読者は、朱里の側に立ちやすい。そして立ったまま、とんでもないところまで連れて行かれます。レビューにその怖さがそのまま出ています。
あまりにも本作主人公が普通の感覚過ぎていて、ひょっとしたら私も何かきっかけがあればこうなるのかもしれないと思った。それが本作の怖さ。気持ち悪い平凡。
会社が加害者を守る過程が、丁寧すぎる
この作品でいちばん現実的なのは、北広ではなく会社です。
誰も「性被害をもみ消そう」とは言いません。ただ、加害者は残り、被害者は辞め、訴えた人が異動の話をされる。悪意のある人がいなくても、結果として加害者が守られる——その手つきが具体的に描かれます。
怖いのに、笑える
犯罪に踏み込んだあとも、朱里の生活は続きます。家賃も電気代もかかる。第18話のサブタイトルは「うわ…電気代高っ」です。
殺人に関わった人間が電気代を気にしている。この落差が笑いになり、同時にいちばん怖いという声が複数出ています。
ここから先はネタバレです。結末に触れたくない方は「読者の評価」まで飛ばしてください。
【ネタバレ】1巻|井戸で、朱里が選んだこと
会社に訴えても何も動かないと分かった朱里は、自分で動きます。
北広を雪深い地方都市に呼び出します。二人は口論になり、揉み合いになる。その最中、北広が古井戸に転落します。
ここが本作の分岐点です。朱里は、北広がこのままでは助からないと分かっています。同時に、助けを呼べば自分が捕まることも分かっている。
朱里は助けませんでした。その場を立ち去り、何ごともなかったように日常へ戻ります。
手を下して殺したわけではありません。「助けない」を選んだだけです。この一段の踏み外し方が、作品全体の設計になっています。ここが1巻のクライマックスで、「完結した」と感じる人が出るのもこの場面のためです。
【ネタバレ】2巻|隠蔽から、大麻へ
北広が消えたあと、朱里がしたのは反省ではなく工作でした。
北広のスマートフォンを使い、本人がまだ生きているかのように投稿を続けます。失踪として処理させるためです。隠蔽が一つ増えるたびに、次の隠蔽が必要になる。
その過程で朱里は違法な大麻ビジネスに関わっていきます。昼は善良なIT企業の社員、夜は犯罪者という二重生活が始まります。
やがて大麻の栽培現場で火災が起き、朱里はそこから逃走します。
復讐の話だったはずが、2巻ではもう別のジャンルに入っています。タイトルの「復讐が足りない」が効いてくるのはここからです。一人罰しても、朱里の中の何かは満たされません。
【ネタバレ】3巻〜最新話|北広が消えても、何も終わらない
3巻以降で、この作品の主題がはっきりします。
- 北広を探す女性が現れます。社内の性加害とは別の事件の被害者でした。北広の加害は一件ではなかったことになります
- 第11話以降、職場では別の性被害が起きます。子どもが関わる事案も出てきます
- 朱里の犯罪との二重生活は、非常事態ではなく「日常」として定着していきます
第18話は前述の「うわ…電気代高っ」、第19話は結婚観と独身への圧力、第20話は「それ本心?」。加害者を一人消しても、職場も社会も何も変わっていません。
この構造がある以上、物語はきれいに終われません。「復讐が足りない」というタイトルは、朱里の欲望のことであると同時に、社会が被害者に返せているものの量を指していると読めます。
「完結」「最終回」で検索されるのはなぜか
この作品の検索には、はっきりした特徴があります。「完結」「最終回」で調べている人が多いのです。実際にはまだ連載中で、最終回は存在しません。
理由は2つ考えられます。
1つは、1巻の井戸の場面で物語が一度閉じて見えること。目的は果たされ、朱里は日常へ戻ります。ここで終わっていても成立する形になっています。
もう1つは、読み終わりたくなる作品だからだと思います。じわじわ怖い話を、いつまで読めばいいのか知りたい。終わりの位置を確認したくなる気持ちは、レビューからも伝わってきます。
話数がサイトによって違う|「30話」はどこにも無い
調べていて分かった、実用的な注意点があります。
| 読める場所 | 話数・巻数 | 評価 |
|---|---|---|
| コミックDAYS(本誌) | 20話前後 | — |
| めちゃコミック | 31話/3巻 | 3.9(9件) |
| Renta! | 4巻まで | 5.0(8件) |
| ブックライブ | 4巻まで | 4.0(4件) |
同じ内容が、コミックDAYSでは20話前後、めちゃコミックでは31話に刻まれています。本誌の1話が、配信サイトでは複数話に分割されているためです。
だから「30話のネタバレ」を探している人は、めちゃコミックの話数で数えています。コミックDAYSにその番号の回はありません。話数で検索するときは、自分がどのサイトの数え方を見ているのかを先に確認したほうが早いです。
冬野梅子の前2作と、何が変わったのか
この作品を理解するのに、作者の前2作が手がかりになります。どちらもRenta!で読めます。
| 作品 | 主人公 | 置かれている状況 |
|---|---|---|
| まじめな会社員 | 菊池あみ子・30歳 | 契約社員。コロナ禍の孤独 |
| スルーロマンス | 待宵マリと菅野翠・32歳 | 同時期に恋に敗れ、女ふたり暮らしを始める |
| 復讐が足りない | 復田朱里 | 小さなIT企業の会社員。同僚の性被害を知る |
並べると分かります。この作者はずっと「30代の、とくに何者でもない女性」を書いてきました。肩書きも年齢も生活の手ざわりも、毎回そこにあります。
本作が違うのは、その同じ人物に犯罪をさせたことだけです。設定を派手にしたわけではありません。前2作と同じ解像度で描かれた普通の会社員が、井戸の前に立っています。
「このマンガがすごい!」に2度入った作家が急に犯罪ものを描いた、という受け取り方は正確ではないと思います。ずっと同じ人を描いていて、今回だけ一段踏み外させた——そう読むほうが、読後の後味と合います。
なぜ会社は動かなかったのか
この物語の出発点は、北広の加害ではありません。会社が動かなかったことです。朱里が井戸まで行った理由は、そこにしかありません。
会社の対応を並べると、順番に意味があります。
- 被害者の真中は、訴えるのではなく辞めた
- 加害者の北広は、何も失わずに残った
- 訴えた朱里に対して出てきたのは処分ではなく、異動の話
誰も悪事を働いていません。それぞれが「面倒を増やさない」という合理的な判断をしただけです。その合計が、加害者を守るという結果になっています。
朱里が最後に選んだ「助けない」も、実は同じ形をしています。手を下していない。ただ動かなかっただけ。会社がやったことと、朱里がやったことは、行為としては同じ構造です。
この作品がスカッとしないのは、そこだと思います。朱里は会社を憎みながら、会社と同じ方法で人を見殺しにしました。
スカッと度:★☆☆☆☆
正直に書きます。この作品にスカッとを求めてはいけません。
加害者は罰を受けます。会社の理不尽も描かれます。条件だけ並べれば復讐漫画です。ところが読み終えたあとに残るのは爽快感ではなく、居心地の悪さです。
理由ははっきりしています。裁いた側が、裁かれるべき側に移動してしまうからです。読者は朱里に共感したまま、共感してはいけない場所まで連れて行かれます。
気持ちよく終わりたい日には向きません。そういう日は『やっとお前が地獄に行くとこ見れるね』のほうが目的に合います。加害者だけが落ちて、こちらは何も背負わずに済みます。
読者の評価|Renta!のレビューは★5しかない
数字を並べます(2026年9月時点)。
- Renta!:5.0(8件)。8件すべてが★5です
- めちゃコミック:3.9(9件)
件数は少ないので、平均値そのものに意味はありません。意味があるのは「★5以外が1件も無い」ことのほうです。
当ブログで直前に扱った『妻の知らない婚前契約』は、逆に★5も★1も1件も無く、全部が2〜4に収まっていました。広告で大量に流れてきた読者は、真ん中に固まります。
本作は反対です。自分で見つけて買った人しか読んでいない。だから評価が割れません。レビュー本文も、感想というより読書体験の報告になっています。
えっなんでレビューないの!?って驚いたので書きます。最初はオフィスもの、職場セクハラ啓発系かと思ってたらなんかとんでもない方向に転がっていって、主人公なんつーか怪物。
もう一つ、レビューで繰り返される言葉が「怖い」です。ただし、その怖さは殺人の場面に向いていません。
怖い。めちゃくちゃ怖い。何十人も殺されまくるスプラッタ系とかではないけど、じわじわ怖い。「暴力性」というものは、外見では判断できない。
読者が怖がっているのは朱里ではなく、自分の中にも同じものがあるかもしれないという疑いです。そこまで持っていける作品は多くありません。
評価
総合 84/100(★★★★☆)
| 項目 | 点数 | 理由 |
|---|---|---|
| ストーリー・構成 | 18/20 | 「助けない」という一段の踏み外し方が上手い |
| キャラクター | 18/20 | 朱里が特別な人間として描かれていないのが最大の武器 |
| 世界観・画力 | 16/20 | 会社の空気の再現度が高い。派手さはない |
| テーマの深さ | 18/20 | 加害者を消しても社会は変わらない、を構造で見せている |
| 読後感・満足度 | 14/20 | 連載中で着地が見えない。気持ちよくは終われない |
減点は読後感だけです。作品としての完成度は、当ブログで扱ってきた中でも上位に入ります。ただし「スカッとしたい」という目的には応えません。あくまで一読者としての個人的な評価です。
『復讐が足りない』を読む方法
井戸の場面を知ってから1話を読み返すと、朱里の受け流し方がまるで違って見えます。あれは我慢ではなく、選択を保留していただけだからです。
- 4巻まで配信中(4巻は2026年9月9日に配信されました)
- Renta!は1巻171ページ・購入720ポイント(この作品にレンタルはありません)
- ブックライブも4巻まで配信中で、1〜4巻はどれも792円(税込)。ブラウザで試し読みできます
- 試し読みあり。会員登録は無料で、購入分にはポイント還元があります
- 1巻の井戸まで読めば、いったん区切りがつきます。まず1巻だけ試すのが向いています
- 話ごとに少しずつ読みたい場合は、めちゃコミックのほうが刻みが細かいです
価格は2026年9月時点で確認したものです。変わることがあるので、最新は公式ページでご確認ください。
似ている作品・あわせて読みたい
加害者と被害者が入れ替わっていくという点では、『右手に指輪をする夫』が近い読み心地です。制裁より謎解きに寄っています。
読み終えてスカッとしないタイプの復讐劇としては、『デブスの戯れ』も同じ棚です。あちらは加害者の動機が最後まで明かされません。
職場で理不尽を押しつけられる話を、もっと軽く読みたい場合は『花園まどかの言うとおり』が向いています。こちらは実力で正面から潰します。
よくある質問(FAQ)
Q. 完結していますか?
A. していません。コミックDAYSで連載中です。単行本は4巻まで出ています(4巻は2026年9月9日配信)。
Q. 北広はどうなりましたか?
A. 古井戸に転落し、朱里に助けられないまま放置されました。朱里が手を下したのではなく、「助けない」を選んだ形です。
Q. 朱里は捕まりますか?
A. 現時点では捕まっていません。隠蔽を重ねながら、犯罪との二重生活が日常になっています。
Q. スカッとしますか?
A. しません。復讐した側が加害者に移っていく話なので、爽快感より居心地の悪さが残ります。
Q. 「30話」のネタバレを探しているのですが?
A. それはめちゃコミックの話数です。本誌のコミックDAYSは20話前後で、同じ内容が配信サイトでは細かく分割されています。
Q. ドラマ化されていますか?
A. されていません。2026年9月時点で実写化の発表はありません。
こんな人にぴったり
- 会社が加害者を守る場面に、心当たりがある人
- 後味の悪さも含めて読み応えだと思える人
- 主人公に共感したまま連れて行かれる体験がしたい人
- 「このマンガがすごい!」系の作品を追っている人
逆に、加害者が落ちて終わる気持ちのいい話を探している人には向きません。そういう1作を探しているなら、スカッとする復讐漫画のおすすめまとめから完結済みの作品を選んだほうが満足できます。
まとめ
- 完結していません。コミックDAYS連載中で、単行本は4巻まで出ています
- 同僚の性被害を知った復田朱里が訴えるが、会社は加害者北広を守る
- 1巻のクライマックスで北広が古井戸に転落。朱里は助けずに立ち去る
- 2巻で隠蔽が始まり、違法大麻ビジネスと火災まで転がっていく
- 3巻以降、北広の別の被害者が現れ、職場では別の性被害が起きる
- Renta!のレビューは8件すべて★5。ただしスカッとはしない
ほかのスカッとする復讐漫画は、スカッとする復讐漫画のおすすめまとめにまとめています。


